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みつのあわれ
蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ
室生 犀星
Read 蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ (みつのあわれ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,662 characters · 174 screens
」
「じゃ塩鱈はどう。」
「塩鱈のほうがいいね。」
「金魚の子ってのは、そりゃあずきくらいの小ささで、そりゃ、可愛いわよ、まるでこれがおさかなとは思えない小ささで、尾もひれも頭もあって泳ぐの。でね、名前をつけなくちゃ。」
「そうか、金太郎とでも、つけますか。」
「もっと立派な名前でなくちゃ厭、金彦とか何とかいう堂々たる名前のことよ。」
「寛くり考えて置こう。」
「では、あたい、急いで交尾してまいります、いい子をはらむよう一日じゅう祈っていて頂戴。」
「あ、」
「朱いのがいいんでしょう。金魚は朱いのに限るわよ。黒いのは陰気くさいから、例によって燃えている逞しいやつを一尾、つかまえるわ。」
「しくじるな。」
「しくじるもんですか、炎のようなやつと、夕焼の中で燃えて取りくんで来るわよ。」
「おじさま、見てよ、木だの板だの、一つもなくなっちゃった。」
「うむ。」
「どんな小さい板切れも、みんな、つかったのね、覚えをしてあったものをみんな覚えのあるところに、嵌めこんで了っているわ。大工さんは大工さんという生きた機械なのね。」
「こまかいことでは、藤蔓というものがみんな右巻きだということまで、知っているんだ。