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ろんごものがたり
論語物語
下村 湖人
Read 論語物語 (ろんごものがたり) by 下村 湖人 (しもむらこじん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 132,688 characters · 266 screens
永遠に流るるもの
〔註――「桴に乗りて海に浮ぶ」云々の一節は、原文では、孔子が子路を他の人に向つて批評したことになつているが、この物語では、それを両人直接の対話として取扱って見た。〕
永遠に流るるもの
子、川の上に在りて曰く、逝く者は斯くの如きかな。昼夜を舎かずと。――子罕篇――
偉大な沈默を守って、夕陽はそろそろと草原の果に沈みはじめた。水の流れはゆるやかに、鈍びた紅を底深く溶かしこんで、刻一刻と遠い狭霧の中に巻き収められて行く。
孔子は、今日もただ一人の童子を伴につれて、広々とした河原にたたずんでいる。夕暮の天地の中に、その姿は寒々として厳かである。
七十余年の間、努めに努め、磨きに磨き来った彼の生涯は、思えば孤独への一路であった。永い漂泊の旅にもかかわらず、彼はついに大道を布くべき一人の名君をも見出さなかった。五十年の労苦を共にした夫人上官氏にも先立たれた。一人息子の伯魚の死をさえ、彼は見送らねばならなかった。そして何よりも傷ましいことは、三千の門人中、わが道を伝うべき唯一の人として、彼が絶大の希望をかけて来た顔回が、夭くしてこの世を去ったことである。夫人の死や息子の死に耐え得た彼も、顔回の死にあっては、ほとんど絶望に近い衝撃をうけて、