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ひんみんくらぶ
貧民倶楽部
泉 鏡花
Read 貧民倶楽部 (ひんみんくらぶ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 55,333 characters · 111 screens
さ、どうじゃ。」
と平和に謂出だせば、屠犬児は顔を擡げて、「何の雑作もござりませぬ。初手からそう出さっしゃれば、訳は無いに、余計なことに御騒ぎなされる。やれやれ。」と起上りて、「襟首を放した、放した。」
書生も馬丁も没面目、手持不沙汰に控えたり。屠犬児は腰を捻りて、狆を手許に掴寄せ、
「この骨だ。それ。」と懸声して、やっと一番活を入るれば、不思議や四足をびりびりびり。一同これはと驚く処に、
「も一つかい。」とまたごつん。
たちまち蘇生て悲鳴を揚げ、太く物に恐れし状にて、狆は式台に駈上れば、やれ嬉しやと奥様は戸を引開け抱き上げて、そのまま奥へ、ふいと御入。
しばらくして、侍女立出で、「矢島様お奥で召します。その人を連れまして庭口からお露地へ。」
こはそも華族の御身として、かったいものの屠犬児に、直接御面会は心得ずと、矢島は思えど、主命なれば、来れ、と渠を麾きて、庭口より露地へ廻れば、夫人は縁側に褥を移して、綾子と二人並び坐しつ。引退りて腰元一人、三指にて侍べれり。
「はッ、御意に依って召連れました。」屠犬児はただおずおず。「これへ近う。」と仰せらる。
この屠犬児恐しき家業には似もやらで、至極実体者、地に平伏し、