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おどるちへいせん
踊る地平線(上)
谷 譲次
Read 踊る地平線(上) (おどるちへいせん) by 谷 譲次 (たにじょうじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 168,926 characters · 332 screens
婦みたいな不潔な露西亜女中の大軍とを擁し――以下略――とさえ言えば、いかに「哈爾賓」な、あまりにハルビンな火太立であるかが充分以上に描出されたことになろう。
窓硝子をとおしてまだぼんやりと前の通りを見下ろしていた私は、吹きまくる蒙古風といっしょに奇妙な呼び声が揺れ上ってくるのに気がついた。声は、黄色く暮れてゆく街上をだんだん近づいて来る。
ちいやらまた
たんぐうろえ
また暫らく間をおいて、
ちやらまた
たんぐろえ
私は上半身を乗り出して真下の歩道を覗いた。巌畳な支那の中年男が、酸漿のしぼんだようなものを何本となく藁束に刺したのを肩へ担いで、欠伸みたいに大きくゆっくり口を開けるたんびに、円い太い声が、心もち震えて長閑に吐き出されるのだ。
あああう――あ!
ちい――やらまた
たあ――んぐろえ
山子という木の実である。それを乾して赤く着色したのを、子供の駄菓子として売り歩いているのだが、七、八つ刺した串が一本大洋の一銭とかで、終日砂ほこりにさらされて真っ白になっているのを、売れても売れなくても一向平気に、彼は呶鳴ることそれ自身に生甲斐を感じているらしく、私の眼下でもう一度「ちいやらまた」