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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,163 characters · 25 screens
さに、血染の短刀を持ったまま家の中に飛び込み、面喰って箪笥の上に置いたことだろう」
「――――」
「お前はそれを見た。下手人を庇ってやり度さに、箪笥の上の血染の短刀を取り上げると、駕籠の前に落ちている鞘に納めて、花嫁が忘れたことにして駕籠の中へ入れてやったことだろう」
「――――」
「夫の様子がおかしいので、お神さんはすぐその後で、花嫁の裾を直すとか言って、駕籠をのぞいた。――花嫁は死んでいる、――その下手人は誰か、お神さんには一と目で判った筈だ。それにつけても、今更ながら、自分の伜を振り捨て、その伜を半気ちがいにして、金持の田原屋へ嫁入りする花嫁のお喜美憎さの心持が、一ぺんに燃え上がった」
「いえ、それは」
お国はあわてて口を挟みましたが、平次の自信に満ちた様子を見ると、また急に黙ってしまいました。
「それに、万一の場合は、伜の罪を引受けるつもりで、死骸の膝の上にあった守り刀の短刀を抜いて、力任せで死骸の胸に突き立てた」
平次は静かに言いきったのでした。
「それが悪かったでしょうか、銭形の親分、――でも、あの女を殺したのは、この私に違いないんです。伜や家の人は、何んにも知りゃしません。