Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,163 characters · 25 screens

Aozora Bunko

一

一

「あッ、大変、嫁御が死んでいる」

駕籠の戸を押しあけた仲人の伊賀屋源六は、まさに完全に尻餅をつきました。

「何?」

「そんな馬鹿なことが」

伊賀屋源六が大地を這い廻る後ろから、六つ七つの提灯は一ペンに集まって、駕籠の中を蔽うところなく照らし出したのです。

中には当夜の花嫁、浪人秋山佐仲の娘お喜美が、晴着の胸を紅に染めて、角隠しをした首をがっくりと、前にのめっているのも痛々しい姿でした。

その癖襟から頬へかけて流れる美しい線が、青白い影を作って、宇田川小町と謳われた非凡の艶色は、死もまた奪う由なく、八方から浴びせた提灯の光の中に、凄惨な美しいものさえ醸し出しているのです。

「何? 娘が?」

花嫁の父親秋山佐仲は、後ろの方から、転げるように飛んで来ました。さすがに武家の出だけに、一人娘の嫁入りの儀式に連なる礼装の麻裃、両刀を高々と手挟んだのを、後ろに廻して、膝の汚れも構わず、乗物の中に手を突っ込み、娘の首を起してハッと息を呑みました。

花嫁化粧念入りに仕上げた顔は、鉛の如く変って、カッと見開いた眼は底知れぬ恐怖に翳って、恐らくこの生命を喪った瞳のうちにこそ、最後に映った凶悪無残な、下手人の面影がこびり付いていることでしょう。