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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,712 characters · 29 screens

Aozora Bunko

あの土蔵の中には、和泉屋をのけて三人の人間しかいない。仁科に、長崎屋に、日進堂……。外部から来るのでないとすると、殺すのはこの三人のうち。……あなたには、どいつが下手人なのか、もう、お見こみがついているんですか」

顎十郎はうなずいて、

「だいたい、当りはついている。……こうまで執念深くからむ以上、いずれにせよ、あれらの仲間になにか深い怨みを持っているやつ」

「……それで?」

「おれの見こみでは、まず、日進堂」

「えッ」

「たぶん、そのへんと思って、出来るだけくわしく三人の素性を調べて見た」

「へい」

「……ところでこの日進堂、……十二歳のとき日進堂へ養子に行ったが、素性を洗うと、むかし長崎で、和泉屋、長崎屋、佐倉屋、佐原屋の四人組に家をつぶされた天草屋の次男……」

そう言い捨てて闇だまりから立ちあがると、のそのそと土蔵の戸前へ近づいて行って錠をはずし、拳でトントンと土扉をたたきながら、

「あたしです、仙波です……ちょっと、ここをあけてください」

間もなく、内側からガラガラと土扉がひきあけられ、顔を出したのが日進堂。つづいて、仁科も戸口へ出て来る。日進堂は、うだったような赭い顔をして、