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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,468 characters · 25 screens
ろくな聴き方も出来まいが、話というのはどんなことだ」
「そのことでございますが……」
清五郎は膝小僧を押し出すようにして声をひそめ、
「……いまお聴きになりましたでしょう、阿波屋の……」
「うむ、六人が順々に死んで、やがて阿波屋の一家が死に絶えるだろうという話か」
清五郎はあわてて手で抑えて、
「どうか、もうすこし小さな声で。……へい、そのことなんでございます。……ここではお話しにくうございますので、お手間は取らせませんから、どうか、そのへんまで……」
赤痣
万年橋の鯨汁。鯨一式で濁酒を売る。朝の早いのが名物で、部屋で夜明しをした中間や朝帰りのがえんどもに朝飯を喰わせる。
清五郎は、なにかよっぽど思いつめたことがあるふうで、注がれた濁酒に手も出さずにうつむいていたが、やがてしょんぼりと顔をあげると、
「こうなったら、なにもかもさっくりと申しあげますが、……阿波屋の人死は、じつは、あっしのせいなんで……」
顎十郎はチラととど助と眼を見あわせてから、
「えらいことを言いだしたな。阿波屋の六人が死んだのは、お前のせいだというのか」
「へえ、そうなんで」
と言って、ガックリとなり、