Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,468 characters · 25 screens
朝風呂
阿古十郎ことアコ長。もとは北町奉行所に属して江戸一の捕物の名人。ひょんなこと役所をしくじって、今はしがない駕籠舁渡世。
昨夜、おそい客を柳橋まで送りとどけたのは九ツ半。神田まではるばる帰る気がなくなって深川万年町の松平陸奥守の中間部屋へころがりこみ、その翌朝。
朝からとの曇って、間もなくザッと来そうな空模様。怠け者のふたりのことだから、これをいい口実にして、きょうは休むことに話あいがつき、借りた手拭いを肩へひっかけて伊勢崎町の湯へ出かけて行く。
このへんは下町でも朝が早いから、まだ七ツというのにひどく混雑する。いい声で源太節を唄うのがあると思うと、逆上た声で浄瑠璃を唸るやつもある。
ほかの町内の風呂というのはなんとなく気ぶっせいなもので、無駄口をたたきあう知った顔もないから、濡手拭いを頭へのせてだんまりで湯につかっていると、ふと、こんなモソモソ話が聞えてきた。柘榴口の中は薄暗いから顔は見えないが、どちらも年配らしい落着いた声。
「お聴きになりましたか、阿波屋の……」
「いま聴いてゾッとしているところです。……じっさい、ひとごとながら、こうなるといささか怯気がつきます」