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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Read 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 261,216 characters · 521 screens
「やっぱり大阪は大阪だな、俺でさえ久しぶりに来てみれば、悪くないんだから無理はない……。ねえ、お米の方」
と、舟の進むのとは逆に向いて、艀の舳に腰かけながら、くわえ煙管で納まっているのは、啓之助の内意をふくんで、お米の監視についてきた仲間の宅助。
「さだめしあなたはお懐かしゅうござんしょう。旦那様からお許しが出たんだから、まあこれから日限までは、ゆっくりと、好きな所をお歩きなせえ。だが、ひとり歩きはいけませんぜ。そいつアくれぐれも、啓之助様から、念を押されてきた宅助。あなたの紐になって、どこまでも一緒にクッついてまいります。ハイ、立慶河岸のお宅へも道頓堀の芝居へも、大津の叔父さん――なんていったっけ、そうそう、大津絵師の半斎か、あそこへ行くとおっしゃっても、宅助やっぱりお供しなけりゃなりませんぜ」
うるさいやつ、毛虫みたいな男――と眉をひそめながら、お米は返辞もしないで、わざと、日傘を横にした。
ふふん……ソロソロご機嫌がお悪いネ。
大阪へ着いた以上は、もうどうにでもなれというような不貞くされをやったって、そうは問屋で卸さねえぞ――というようなのは宅助の面がまえ。