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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Read 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 261,216 characters · 521 screens
そうして、あれを……という意味を見せると、寂としていた七人の中から、ひとりが立ってうやうやしく埋木をはずし……」
「ウーム……」
と、孫兵衛、頭の鉢をしんしんと締めつけられるように呻いて、
「もういい! 話は止めろ」
突然、対手の声を打ち消した。
「世阿弥、おれはてめえを殺さなけれやならない。分っているだろうな」
「うむ」自若として、
「この春、俵一八郎が殺られているから、わしにもやがてやってくるだろうと思っていたところ、観念はしている。だがの、孫兵衛、もう少し話してもいいじゃないか」
「つまらねえ」
「いや、愉悦だ、わしは話したい」
「おれはてめえを殺そうとしているのだ。殺されるこの孫兵衛と話をするのが、愉悦だというばかはあるめえ」
「この身を殺す敵でも悪人でも、こうして、世間の人間と口をきくのはわしにとると言いようのない珍しさだからな、まアゆるしてくれ、そこで今の話だが……」と、世阿弥は低い声音で、平調な言葉を自然につづける。
「――臨終の間際に、あれをと、お前の母親が、柱の隠し穴から取りださせたものを、細い蝋細工みたいな手にふるえながら持った。白蛇の喉をおさえるようにつかんでいた。