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おうごんかめん
黄金仮面
江戸川 乱歩
Read 黄金仮面 (おうごんかめん) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,357 characters · 287 screens
「君、一寸待ち給え」
侯爵が怒鳴ると、男はクルッと振返って、ニヤニヤ笑いながら一礼した。肩まで垂れた長髪の上に、アイヌの酋長みたいな顔中髭だらけの、薄気味悪い人物だ。
「君は、一体誰です。今何をしていたのです」
侯爵の詰問に、相手の男が答える前に、突然横合から口を出したのは、執事の三好老人だ。
「木場さん。こんなことを仕出来して下すっては、私が困るじゃありませんか。もう一日もお泊めして置くことは出来ませんぞ。……イヤ、御前様、何とも申訳がございません。あの男は、実は、……」
「分った、分った。君の信仰している天理教の教師だね」侯爵は、怪人物の素姓が分ると、安堵して云った。「だが、再びこんな粗相のない様に、君からよく云って置く方がよい」
三好執事は天理教の狂信者で、門内の彼の住居には、時々説教旅行の教師が泊り込んで行く。木場さんというのもその一人で、見ず知らずではあったが、教会の確かな紹介状を持参したので、三好老人は安心して泊めて置いたのだ。どうして覗いたりしたのかと尋ねて見ると、新任のフランス大使閣下の御顔を一目見たかったのだと答えた。
さてそれからは別段の出来事もなく、大使一行の美術品巡覧は主客とも充分の満足を以て終った。