Japanese reading practice

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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

Read 黄金仮面 (おうごんかめん) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,357 characters · 287 screens

Aozora Bunko

鎧武者といっても、生人形ではない。鎧櫃の上に、ドッカと腰かけた形に飾ってある、中味はがらんどうの陳列品だ。黄金仮面の小雪は、その鎧櫃に倒れる様に凭れかかっていた。早鐘の動悸は静めようとて静まるものではない。身体全体が、恐ろしい耳鳴りに調子を合わせて、ドキンドキンと揺れている。

不思議な静寂、ひどい耳鳴りの為に、凡ての物音が消されるのか、屋外の人々は、遠く遠く立去ってしまったかの如く、何の気配も聞えては来ぬ。空漠たる虚空に、無人の美術館だけが、ポッツリと浮んでいる感じである。

その時、何とも形容出来ない変挺なことが起った。

彼女の動悸の外に、もう一つ別の調子の皷動が、身近かに脈うっていることを感じたのだ。ドクドクドク……と彼女の早い皷動、その間を縫って、ゴクン、ゴクンと確りした非常に遅い皷動が、どこからか伝わって来る。

思わずゾッとして、注意をそれに集中すると、分った。分った。その動悸は彼女の指先から伝わって来るのだ。その指先は、櫃の上の鎧武者のお尻に触っている。すると、この鎧武者には、血が通っているのかしら。

鎧の中には、洋服屋の陳列器みたいな、木の棒が立ててある切りだが、そのがらんどうの鎧がどうしてこんなに脈打っているのだろう。