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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
Read 黒田如水 (くろだじょすい) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 163,639 characters · 325 screens
菩提山の子
一
美濃岩村の菩提山の城へついた。
山村の小城にすぎない。しかし久しぶりに帰って来た主を迎えて、家中は城門に立って出迎えた。半兵衛は城へ入るとすぐ老臣にたずねた。
「黒田どのの質子はかわりないか。この冬は風邪もひかずに過したか」
老臣は縁先から城の平庭を見まわし、ずっと奥の山芝の黄いろく見えるあたりを指さした。
「あれ、ご覧あそばしませ、今日もご家中の児等をあつめてあのとおり元気に、暴れておいでになりまする」
「どれ、どれ……」
半兵衛も褥を起ってそこへ出た。彼は安土のいいつけを胸に持って来た人だった。その眸には蔽いきれない深い傷心がひそんでいた。
菩提山の子
一
腕白は家中にも多い。けれど父母がありながら父母の膝下を遠く離れて、他国の質子となっている子は、その仲間では松千代ひとりであった。
「……あ。小父様」
大勢の子とともに、遊戯に夢中になっていた松千代は、そのうちにふと、本丸の縁に立っている半兵衛重治のすがたを見つけ、見るやいな友達を捨てて此方へ駆け出して来た。
「――小父様。お帰りあそばせ」
「おう、於松。元気だな」
「長いこと、小父様がちっともお見えにならないので、とても淋しかった。