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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
Read あさひの鎧 (あさひのよろい) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 239,520 characters · 475 screens
……数年前ならよかったろうよ。が、今では荷厄介で、ムダさ。……ちょうど右衛門の忠義立てのように!)
また小次郎は足を早めて走った。
行く手の木の間から燈の光が見えた。
(ははあ小屋だな、猪小屋だな)
猪小屋を取り巻いて猿猴の声が、嵐のように響いていた。
頼春はノッと腰をあげた。
左右の手を床へついた。
左の手の下に蝮がいた。
キリキリ!
腕へ捲きついた。
「わッ!」
この時、純白の物が、谷に向かって開いている窓へ、卯の花が叢をなして咲いたように……。
(蝮に噛まれた!)
と、頼春は感じた。
一揮!
蝮を振り落とし、頼春は隣り部屋へ狂い出た。
猩々卯ノ丸が窓から飛び下り、浮藻を両腕に抱き上げた。
小屋の前まで小次郎は来ていた。
と、小屋から手負い猪のように、一人の男が飛び出して来た。
「あぶない!」
ぶつかられるのを防ぐつもりで、
一揮!
小次郎は太刀を振った。
「わッ」
「しまった!」
独楽のように、左の腕を肘のあたりから、切り落とされた頼春は、キリキリキリキリぶん廻った。
が、すぐその姿は見えなくなった。
猪小屋の燈を目あてにして、馳け上がって来た桂子の横手を、丸太のように転がって行く、人間らしい物の姿が見えた。