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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
Read あさひの鎧 (あさひのよろい) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 239,520 characters · 475 screens
「まあ」
と、桂子は小走って行った。
「ははあ咽喉をやられていますな」
右衛門、そう云って腰をかがめ、その傷口を覗くようにしたが、
「刃物で斬った疵ではない」
「おや、あそこにもう一つ」
こう云って桂子はまた小走って、これも芒の中にころがっている、同じような野武士の死骸の前に立った。
「こいつも咽喉をやられております。……刃物で突いた疵ではない」
大鉞を地につきながら、また右衛門は呟くように云った。
林が途切れて芒の原となり、その芒の原の一所に、松の林が立っていたが、そこから数人の云い争うような、高い声が聞こえて来た。
「右衛門や行ってみよう」
もう桂子は走り出した。
と、忽然と芒の原の、芒の上へ、青空の中へ、純白の物が躍り上がり、宙でヒラヒラと翻ったが芒の原へ隠れてしまった。
桂子と右衛門は、眼を見合わせた。
と、まだ白い物は宙へ刎ねた。
「猩々だ――ッ」
「卯ノ丸だよ」
松林の中からは云い争うような、数人の高い声が聞こえて来た。
松林の中では土岐頼春が、五人の野武士にかこまれていた。
左の腕が、肘のあたりから、綺麗さっぱりになくなっていた。
だからそこから長い袖が、ダラリと風わるく垂れていて、それがピラピラ搖れたりした。