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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
Read あさひの鎧 (あさひのよろい) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 239,520 characters · 475 screens
来る人の姿、行く人の姿、頼春の眼には夢の中の人物、遠い他国の武者押しの場の、他人かのように思われ見えた。
心がそこにないからであった。
と、一人の若い武士が、幔幕をかかげてはいって来たが、太郎左衛門に近寄って、その耳もとで囁くと、ふたたび幔幕をかかげて去った。
「頼春」
と太郎左衛門は厳めしく云った。
「北殿(探題北条範貞の事)ご諚じゃよ! そちへのご諚じゃ!」
「…………」
ハッと夢から覚めたように、頼春は舅の顔を見た。
「十郎頼兼と多治見ノ四郎二郎、この二人を討って取る。ついてはそち勢に加わり、二人の者の首級の真偽、見究めかたがた参れとのこと! 早々出発するがよかろう」
「あの私が頼兼、国長の……」
頼春はガチガチ歯を鳴らした。
「討手の勢に加わりますので?」
「そうだ」
と太郎左衛門は鋭く云った。
「北殿ご諚じゃ、すぐ打ち立て!」
「私が一族の頼兼と国長を! ……ソ、それはあまりに無惨!」
「黙れ!」
と太郎左衛門は一喝した。
「そちの返り忠神妙ながら、なお本心心もとないと、おぼしめしての北殿ご諚! これ解らぬか、迂濶者め!」
「じゃと申して、じゃと申して、現在一族の頼兼、国長を……」