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おれはにじゅうめんそうだ
おれは二十面相だ/妖星人R
江戸川 乱歩
Read おれは二十面相だ/妖星人R (おれはにじゅうめんそうだ) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.
N3 · intermediate · modern kanji and kana · 194,415 characters · 391 screens
」
井上君がいいますと、その人は、しばらくだまっていましたが、なにか、おそろしそうに、まっ黒にくもった空を見あげました。もう、あたりはいよいよ暗くなって、湯につかっている、おたがいの顔も、ぼんやりとしか見わけられないほどです。
「わたしも、さいしょは、そう思った。しかし、鳥小屋がこわされて、ニワトリが、いなくなった家が、なんげんもあるんだし、牛が、高いところからおとされでもしたように、足をおって、死んでしまったこともあるし、畑の土が、たたみ一畳じきもあるような大きな手で、えぐりとられているところが、二つも三つもある。わたしは、それを、この目で見た。じつにおそろしいことだ。」
そういって、その人は、また暗い空を、じっと見あげるのでした。
「もう出ようよ。そして、部屋へ帰ろうよ。ぼく、なんだか、寒くなってきた。」
ノロちゃんが、暗くなったあたりを見まわして、泣きだしそうな声を出しました。
「うん、早く、部屋へ、はいったほうがいい。巨人の腕があらわれるのは、いつも夜だからね。夜は、外へ出ないほうがいいよ。」
そこで少年たちは、野天ぶろからあがって、岩の間でからだをふいて、服をきましたが、男の人は、お湯のまん中に立ったまま、さっきから、ずっとむこうの方の空を見つめていました。