Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Read つゆのあとさき by 永井 荷風 (ながいかふう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 74,725 characters · 148 screens
」
「村岡さんて、いつもの村岡さん。」
「そうだよ。」
「京橋の丸丸番だわね。」と春代が行きかけた時、持番の定子というのが、黒ビールと南京豆の小皿を持って来て、酌をしながら、「わたし、先生の小説には思出の深い事があるのよ。あの時分、別に役も何も付いた訳じゃないけれど、始めて蒲田へ這入ったのよ。」
「定さん。蒲田にいた事があるのか。」と清岡はコップを片手に定子の顔を斜に見上げながら、「どうして止したんだ。」
「どうしてッて。見込みがないんですもの。」
「お世辞じゃないが、定さんのような顔立なら映画には向くんだがね。監督の言う事を聴かないからだろう。女は何になっても男の後援がなくっちゃ駄目だからな。女流作家だって少し売出すまでには、みんな背景があるんだよ。」
その時君江が巻煙草を啣えながら歩いて来て、黙って清岡の側に腰をかける。春代が戻って来て電話の返事を伝え、そのまま腰をかけて、
「先生。何か御馳走してよ。君ちゃんは。」
「わたしこの方がいいわ。」と清岡が飲残した黒ビールのコップを取上げた。
「おむつまじい事ね。じゃア、春代さん、チキンライスか何か一緒にたべましょう。