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ゆうれいかしや
ゆうれい貸屋
山本 周五郎
Read ゆうれい貸屋 (ゆうれいかしや) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 21,320 characters · 42 screens
「そうか、そういうわけか、そうとは知らねえもんだから、いきなりこりゃこりゃなんてとびだすには、びっくらした」
「これからは気をつけてね、さあ起きて湯へでもいってらっしゃい、あたしそのあいだにここの支度をしとくから……はい手拭」
銭湯で汗をながして、さっぱりして帰ると膳拵えが出来ていた。鰺の酢の物にもろきゅう、烏賊さしにさよりの糸作り、そして焜炉には蛤鍋が味噌のいい匂いを立てていた。
「これあどうも、こいつあたいそうな御馳走じゃあねえか、おめえにこんな散財をさせちゃあ済まねえ」
「散財なんかしやしないわ、これみんな金田屋から持って来たのよ」
「えっ、金田屋、……二丁目のか」
「そうよ、板場で拵えたばかりのを持って来たのよ、お酒もたっぷりあるから、今夜はあんたも酔ってね」お染ゆう女は、例の眼で斜交いにこっちを睨んで、「あんたはいくらなにしても、すぐおじぎしちゃうんだもの、あれじゃあっけなくてつまんないわ、今夜は酔うのよ、酔えば息が長く続くから」
「そのことなら安心しねえ、ゆんべは遠慮があったし、二年ぶりのなんだったからよ、そうわかれあ、へっ自慢じゃあねえけれども、おめえなんざあ十日と経たねえうちにげっそりして、へとへとのゆうれえみてえに……ああいけねえ、おめえは今でもゆうれえだからな、するてえと、どんな寸法になるんだ」