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ガラマサどん
ガラマサどん
佐々木 邦
Read ガラマサどん by 佐々木 邦 (ささきくに) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 99,079 characters · 202 screens
月足らずの偉人
「いや、入っても平社員じゃ誰も聴いてくれない」
「成程」
「四十を越して重役になる早々、時こそ来れとイヨ/\始めたのさ」
「然ういう御動機じゃ私も仕方ありません」
「一段聴くかね?」
「はあ」
「一間にこそはあゝ……」
と社長は立った。ついて日本間へ行ったら、三味線弾きが待っていた。迚も敵わない。
月足らずの偉人
社長の自叙伝係を仰せつかってから、三月たって年末になった。いつもなら、
「あなた、大丈夫?」
と妻が毎日のように訊き続ける季節だ。それも世の常の大丈夫とは内容が違う。
「あなた、ボーナスは大丈夫?」
という期待でなくて、
「あなた、お首は大丈夫?」
という心配だから、可哀そうだった。私としても見識のないこと夥しい。主人の威令は無論行われなかった。十年間に六回首になっている。二年に一回強だから、席の温まる暇がない。
「これから先、何うなるんでございましょう?」
と妻はその都度泣いたものだ。身に沁みているから、兎角心配する。国産ビールへ入ってからも、
「あなた、大丈夫?」
と念を押し続けたが、案外のことに一年と少しで俸給が上った。妻は何か大きな災難の来る前表のように考えたようだったが、それから三月ばかりで社長秘書兼務に栄転した時、