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スウィスにっき
スウィス日記
辻村 伊助
Read スウィス日記 (スウィスにっき) by 辻村 伊助 (つじむらいすけ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 216,275 characters · 410 screens
意識はまた次第に朦朧として、夢とも現ともつかず、いろんな人が出入りするのが、閉じた眼の瞼を透して、見えるような気がしたが、その後のことは今は全く記憶にはない、医者が来て、咽喉のひりつくような水薬をくれて、ことによると、有り合わせのブランデーを生一本で注ぎこまれたのかも知れないが、咳込みながら眼をあいた時は、もう夜はとうに明け放れていたものと見えて、北むきの寝室が、眩しいくらいに明るかった、側には近藤君が起きかえっていた。
医者はヘッスラーの折れた脛を繃帯して後、ぶらりと垂れ下った私の左手をぐるぐる廻して見たり、腕をひっぱって見たり、散々いろんなことをやった揚句、片腕をくの字なりに折り曲げたまま、胸へかけてぐるぐる巻きに繃帯してしまった。
誰だかカフェーを持って来てくれた、見廻わすと、私達は婦人室に搬ばれていて、ネイルドブーツだけは誰かぬがせてくれたと見えて、昨日のなりで、床の中に寝かされていたのだ。だんだん落ちつくと、腰と踵がずきずき痛むし、繃帯された左の方は、手首から先が氷のようでちっとも感じがない。
様子を聞くと、昨夜あれから、近藤君がたった一人で、小屋に着いた時、フォイツはやっぱり、入口にぼんやりしていたそうだ、私を捜しに室を明けると、腰掛の下に俯伏せに倒れていたと云う。