Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
スウィスにっき
スウィス日記
辻村 伊助
Read スウィス日記 (スウィスにっき) by 辻村 伊助 (つじむらいすけ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 216,275 characters · 410 screens
食堂でビーヤを命じた。
村はひっそりして、避暑客らしいのは一人も見えず、大きな宿は静まりかえって、ものの響も聞えない、然し私には、山上の風情ある村と、それをかこむ黒木の森の、何となくなつかしいにしても、ベヤテンベルクは余り気に入らなかった、オーベルラントの山は湖の対岸に見えるにしても、その景は遂にミュルレンの雄大なのに及ばない。村路を東にぬけると、左に小高くせまる山毛欅の林の、うら葉はやや秋づいた下蔭に、エリカの花はまだ紅の花を敷きつめていた、花にはコケモモの紅い果や、カンパヌラの紫が混じっている、私達はその木蔭に寝ころんで、樅の間に瞰下ろされる、ウンテルゼーエンの緑野を眺めた。
こうしたうららかな日は、ヒルテルフィンゲンに着いて十日あまりもつづいたろう、西の風が急に吹き初めて、湖水の波は、泡立つばかり渦まいて来た日の暮れから、板屋の軒は吹き飛ぶばかり暴れに暴れて、暁方かけて雨となった。私はやはり小舟に乗って、薄くらがりに入江の岸を離れると、漕ぐ暇もなく風に揺られて、またたく間にオーベルホーフェンの城の桟橋に吹きつけられてしまった、そのまま舟をつないで、シャツ一枚、びしょ濡れになって宿に帰ったが、暴風雨の湖がおもしろくて、と云って一人では腕がつづかず、とうとう近藤君をそそのかして、吹き降り最中だった午後