Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
『ぐうぞうさいこう』じょげん
ゼエレン・キェルケゴオル
和辻 哲郎
Read ゼエレン・キェルケゴオル (『ぐうぞうさいこう』じょげん) by 和辻 哲郎 (わつじてつろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 101,567 characters · 212 screens
二
私はこのような根が地下にあることを知ってはいた。しかしそれを目の前にまざまざと見たときには、思わず驚異の情に打たれぬわけには行かなかった。私は永いなじみの間に、このような地下の苦しみが不断に彼らにあることを、一度も自分の心臓で感じたことがなかったのである。彼の苦しみの声を聞いたのは、時おりに吹く烈風の際であった。彼の苦しそうな顔を見たのは、湿りのない炎熱の日が一月以上も続いた後であった。しかしその叫び声やしおれた顔も、その機会さえ過ぎれば、すぐに元の快活に帰って苦しみの痕をめったにあとへ残さない。しかも彼らは、我々の眼に秘められた地下の営みを、一日も怠ったことがないのであった。あの美しい幹も葉も、五月の風に吹かれて飛ぶ緑の花粉も、実はこのような苦労の上にのみ可能なのであった。
この時以来私は松の樹のみならず、あらゆる植物に心から親しみを感ずるようになった。彼らは我々とともに生きているのである。それは誰でも知っている事だが、私には新しい事実としか思えなかった。
二
私は高野山へのぼった。そうして不動坂にさしかかった時に、数知れず立ち並んでいるあの太い檜の木から、何とも言えぬ荘厳な心持ちを押しつけられた。