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かぜのまたさぶろう
ポラーノの広場
Read ポラーノの広場 (かぜのまたさぶろう) by Miyazawa Kenji (宮沢 賢治) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 67,062 characters · 135 screens
タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった
ホロタイタネリは、小屋の出口で、でまかせのうたをうたいながら、何か細かくむしったものを、ばたばたばたばた、棒で叩いて居りました。
「山のうえから、青い藤蔓とってきた
…西風ゴスケに北風カスケ…
崖のうえから、赤い藤蔓とってきた
…西風ゴスケに北風カスケ…
森のなかから、白い藤蔓とってきた
…西風ゴスケに北風カスケ…
洞のなかから、黒い藤蔓とってきた
…西風ゴスケに北風カスケ…
山のうえから、…」
タネリが叩いているものは、冬中かかって凍らして、こまかく裂いた藤蔓でした。
「山のうえから、青いけむりがふきだした
…西風ゴスケに北風カスケ…
崖のうえから、赤いけむりがふきだした
…西風ゴスケに北風カスケ…
森のなかから、白いけむりがふきだした
…西風ゴスケに北風カスケ…
洞のなかから、黒いけむりがふきだした
…西風ゴスケに北風カスケ…。」
ところがタネリは、もうやめてしまいました。向うの野はらや丘が、あんまり立派で明るくて、それにかげろうが、「さあ行こう、さあ行こう。」というように、そこらいちめん、ゆらゆらのぼっているのです。
タネリはとうとう、叩いた蔓を一束もって、口でもにちゃにちゃ噛みながら、そっちの方へ飛びだしました。