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せけんし
世間師
小栗 風葉
Read 世間師 (せけんし) by 小栗 風葉 (おぐりふうよう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,390 characters · 36 screens
家は木賃だもの、誰の上さんだろうが何だろうが、一晩だって不足を黙って措きゃしないから。」
「おい、阿母。いつまでそんな廻り冗いことを言ってるんだ、聞いてても小憤れってえ。」と傍から一人がひき取って、「万年屋さん、お前がそんな心配しねえでも、上さんの勘定はその日その日にちゃんとすんでるんだとよ。」
「女に喰い逸ぐりはねえやな。お前が留守になりゃ、今度はもっと若い野郎が、上さんの食うから寝るまでいっさい世話するてえんだから、お前も安心してひき取んねえ。」とまた一人が冷かす。
万年屋の顔色は変わった。ガタガタ体が顫える。何か言おうとするが口も利かれぬらしい。
ところへ、あいにくなもので、どこへか遊びに行っていた万年屋の女房と銭占屋とが、二人とも赤い顔をしながらいい機嫌で帰ってきた。点灯ころの家の中は薄暗い、何の気づかずに土間へ入って、バッタリ万年屋と顔を合わせた女房は、ハッとして逃げようとする。と、いきなり亭主はその後髪を攫んだ。女は悲鳴を揚げる。
「何しやがるんだ!」銭占屋が横合からむんずと万年屋の利腕を抑えた。
「うぬ、うぬだな!」
「俺ならどうした。女だって活物だ、なぜその日に困らねえようにしておいてやらねえ。