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アラスカのひょうが
中谷宇吉郎紀行集 アラスカの氷河
中谷 宇吉郎
Read 中谷宇吉郎紀行集 アラスカの氷河 (アラスカのひょうが) by 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 122,039 characters · 248 screens
その直後は、孔の壁はまだなかば熔けた状態にある。そしてそれが冷えきるまでには、たくさんの乳房が垂れさがる。これが熔岩の鍾乳石である。熔岩の雫が垂れ落ちれば、鍾乳洞の場合のように、下に石筍ができるはずである。そういう熔岩の石筍も、ちゃんとある。
おもしろいのは、これらの「鍾乳石」や「石筍」の色である。パホエホエと同じ成分のはずなのに、黒色のものは、ほとんどない。黄褐色、小豆色、赤褐色、黄緑色など、いろいろな色があるが、いずれも落着いた美しい色であって、単純な絵の具の色ではない。噴火孔の壁も同様であって、遠くから見ると、真赤な口を開いたように見えるが、中にはいってよく見ると、赤を基調として、その中に千差万別の色がはいっている。噴火孔の端のところは、熔岩が雪庇のような形に捲き垂れているが、この部分の色の変化が、非常におもしろい。外側の大気に面した部分は、普通の黒いパホエホエである。ところが孔のほうへ垂れた端は、真赤な色をしている。黒から赤へ移る中間の部分は、黄褐色であって、これらの色は、互にぼかしあったように、連続的に変化している。これはたぶん冷却速度のちがいが、おもな原因であろう。