Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

Read 二十四の瞳 (にじゅうしのひとみ) by 壺井 栄 (つぼいさかえ) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.

N3 · intermediate · modern kanji and kana · 113,429 characters · 227 screens

Aozora Bunko

「あきれた人もあるもんじゃな。ひとの災難を聞いて、けらけら笑う先生があろうか。ひとつ、ねじこんできた」

やがてそれは、また尾ひれがついて村中に伝わってゆくにちがいない。じっと突っ立って、二分間ほど考えこんでいた先生は、心配そうにとりまいている生徒たちに気がつくと、泣きそうな顔で笑って、しかし声だけは快活に、

「さ、もうやめましょう。小石先生しっぱいの巻だ。浜で、歌でもうたおうか」

くるっときびすをかえして先に立った。その口もとは笑っているが、ぽろんと涙をこぼしたのを、子どもたちが見のがすわけはない。

「先生が、泣きよる」

「よろずやのばあやんが、泣かしたんど」

そんなささやきがきこえて、あとはひっそりと、ぞうりの足音だけになった。ふりかえって、泣いてなんかいないよう、と笑ってみせようかと思ったとたん、また涙がこぼれそうになったので、だまった。このさい笑うのはよくないとも思った。さっき笑ったのも、よろずやのおかみさんがいうように、人の災難を笑ったというよりも、ほんとうのところは、マスノの身ぶりがおかしく、それにつづいて、押入れの連想は、一学期のある日の、仁太を思いだして笑わせたのであった。