Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

Read 二十四の瞳 (にじゅうしのひとみ) by 壺井 栄 (つぼいさかえ) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.

N3 · intermediate · modern kanji and kana · 113,429 characters · 227 screens

Aozora Bunko

「天皇陛下はどこにいらっしゃいますか?」

ハイ ハイ と手があがったなかで、めずらしく仁太がさされ、

「はい、仁太くん」

仁太はからだじゅうからしぼり出すような、れいの大声で、

「天皇陛下は、押入れの中におります」

あんまりきばつな答えに、先生は涙を出して笑った。先生だけでなく、ほかの生徒も笑ったのだ。笑いは教室をゆるがし、学校のそとまでひびいていったほどだった。東京、宮城、などという声がきこえても、仁太はがてんのゆかぬ顔をしていた。

「どうして、押入れに天皇陛下がいるの?」

笑いがやまってからきくと、仁太は少々自信をなくした声で、

「学校の、押入れん中にかくしてあるんじゃないんかいや」

それでわかった。仁太がいうのは天皇陛下の写真だったのだ。奉安殿のなかった学校では、天皇陛下の写真は押入れにかぎをかけてしまってあったのだ。

仁太の家の押入れの壁が落ちたことは、それを思いださせたのであった。若い女先生は、思いだすたびに笑わずにいられなかったのであるが、そんな言いわけをよろずやのおかみさんに聞いてももらえず、だまって歩いた。涙がこぼれている今でさえ、その話はおかしい。