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がんりゅうじま
仇討二十一話
直木 三十五
Read 仇討二十一話 (がんりゅうじま) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 16,854 characters · 35 screens
内所へきて、胴巻に封印をし、印鑑の紙をみていると、
「親方、瀬川ざます」
と、襖の外で声がしたから、
「さあ、御入り」
女房が、煙管(きせる)をはたいて、
「御苦労だね、一つ御頼みしようか。これ、鏡台をもっておいで」
と、昔の女郎、女房の髪まで結ってやったが、今は芸者は半襟をかけても、皺をよせる。
「主人やろな、番頭にしては外の人と話振りもちがうし。中々上方者にしてはよく遊んでいる」
と、亭主、印を見ながら女房に云っていると、髪を梳(す)きながら眺めていた瀬川が、
「まあ、珍らしい印形、妾(わたし)のとよく似ていますが」
「ふん、わしもそう思ってるが、こりゃ町家のと違うらしいな」
「親方一寸(ちょっと)拝見してもよざますか」
手にとって見ると、夫久之進(きゅうのしん)の所持していた物と寸分の違いも無い。はやる胸を押隠して、
「一寸拝借させて頂きましても……」
「いいとも」
髪を結上げて、部屋へ戻り、印形を較べてみると全く同である。禿(かむろ)を呼んで、その客の脇差を取寄せると、間違いも無い拵(こしら)え、目貫(めぬき)の竹に虎、柄頭(つかがしら)の同じ模様、蝋塗(ろうぬり)の鞘、糸の色に至るまで、朝夕自分が持たせて出した夫の腰の物である。