Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
いせのまき
伊勢之巻
泉 鏡花
Read 伊勢之巻 (いせのまき) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,617 characters · 35 screens
「御免なさいまし。」と女中、立消えの体になる。
見送りもせず、夫人はちょいと根の高い円髷の鬢に手を障って、金蒔絵の鼈甲の櫛を抜くと、指環の宝玉きらりと動いて、後毛を掻撫でた。
廊下をばたばた、しとしとと畳ざわり。襖に半身を隠して老番頭、呆れ顔の長いのを、擡げるがごとく差出したが、急込んだ調子で、
「はッ。」
夫人は蒲団に居直り、薄い膝に両手をちゃんと、媚しいが威儀正しく、
「寝ますから、もうお構いでない、お取込の処を御厄介ねえ。」
「はッはッ。」
遠くから長廊下を駈けて来た呼吸づかい、番頭は口に手を当てて打咳き、
「ええ、混雑いたしまして、どうも、その実に行届きません、平に御勘弁下さいまして。」
「いいえ。」
「もし、あなた様、希有でござります。確かたった今、私が、こちらへお客人をお取次申しましてござりましてござりまするな。」
「そう、立花さんという方が見えたってお謂いだったよ。どうかしたの。」
「へい、そこで女どもをもちまして、お支度の儀を伺わせました処、誰方もお見えなさりませんそうでござりまして。」
「ああ、そう、誰もいらっしゃりやしませんよ。」
「はてな、もし。