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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Read 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 203,094 characters · 411 screens
はははははは。」
「就きましては、かの草紙のうちに説かれましたる一、二ヵ条、おろかの者にも会得のまいるように委しくお説き明かしを願いたさに、かように推して参上つかまつりました。」
言いさして相手の顔色を窺うと、兼好は頭をなでながら軽く笑った。
「くどくも言う通り、つれづれなるままの筆すさび、もとより人に見しょうとて書き留めたものでもなければ、あらためて説き明かすほどの理屈も法もござらぬが、ともかくも、わざわざ尋ねてまいられたからは、われらもおのれが知るだけのことはお話し申そう。して、御不審の条々は……。」
「まず御坊が、かの徒然草に書かれましたる中に『よろずにいみじくとも、色好まざらん男はいと騒騒しく、玉の巵のそこなき心地ぞすべき』と仰せられました。また『世の人の心まどわすこと色慾にしかず、人の心は愚なるものかな』と仰せられたを見ますれば、この道の余儀ないことは疾うに御存知かとも存じられまする。まだそればかりでなく『女の髪すじをよれる綱には大象もよく繋がれ、女のはける足駄にて作れる笛には秋の鹿も寄る』とも記されました。して見ますれば、われわれ有情の凡夫が色に狂い、恋に迷うも、まことに是非ない儀でござりましょうか。