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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Read 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 203,094 characters · 411 screens
」
美しい上の紅さいた口から、こうした問いを露骨に持ち出されて、さすがに世馴れた兼好も少し返事に困ったらしかった。忽ちに小さい身体をゆすって大きく笑い出した。
「いしくも問われた。われら決して詐りは書かぬ。その通り、その通りじゃよ。見るところ、お身は年も若い、眉目形もすぐれて美しい。定めて思う人もおわそう、思わるる人もあろう。迷うも狂うも今のうちじゃで、せいぜい面白う世を送られい。悟るも醒むるも扨それから後のことでござるよ。」
「よく判りました。ようぞお教え下されました。」と、女はあらためて頭を下げた。「但し唯今仰せ聞けられましたは、わたくし共のような若い者共への一の御教化。人の盛りを過ぎたる者の深くも迷い入りましたるは……。」
「甚だ見苦しいものじゃと存じ申すよ。さればかの草紙の中にも『四十歳にもあまりぬる人の色めきたるかた、おのずから忍びてあらんは如何はせん。言に打ち出でて男女のこと、人の上をも言い戯るるこそ、似げなく見苦しけれ』と書き申したわ。」
「その見苦しいをよく弁えながらも、心の駒の怪しゅう狂い乱れて、われと手綱を引きしめん術もなく、あやめも分かず迷う者の上には、老いも若きも差別はござりますまい。