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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

Read 光り合ういのち (ひかりあういのち) by 倉田 百三 (くらたひゃくぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,439 characters · 263 screens

Aozora Bunko

「教科書で、万葉や、古事記が尊い古典だということだけは教わりました」

「尊い古典だよ。まったく。世界に誇っていいものだ」

と何か慨くように言ったが、私を子供と思ったのか「まあ、聴いて置きなさい」

「是非会の時参ります」

鈴子が茶菓を出して、下手に坐っていた。寺とはまた違った閑寂が部屋にも、庭にも沈み、匂っていた。古びて荒れが見えてはいるが、※などにはない雅致が家のすべてにあった。庭には池があって八ツ橋がかかっていた。鯉のはねる音がした。

「鈴子や、万葉集を持って来ておあげ」

「はい」

と鈴子は立って書院の棚から和綴の本を持って来て、私の机の上に置いて、また前のところに侍していた。

「万葉集という歌集はどこをあけても秀歌ばかりなんだ」

と言って、開けたところの歌をさして、

「巻二十、大炊王の歌

天地を照らす日月の極みなくあるべきものを何か思わむ

大きな、まっすぐな歌だ。今度は巻六、船王の歌」

私は早くめくれないので困っていると、鈴子が側に来て、「なれてますから」

とその歌のところを出してくれた。そしてそのまま私の側についていてくれた。

「眉のごと雲居に見ゆる阿波の山かけてこぐ舟泊り知らずも