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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
Read 光り合ういのち (ひかりあういのち) by 倉田 百三 (くらたひゃくぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,439 characters · 263 screens
私は父を柔和な人間だと思って、心中尊敬の念を感じた。
が幼ないころの私の心に、父が悪い印象を与えた事がひとつある。
それは私を学校の先生に訴えたことだ。小学校の三年の初め、私が家であまりわがままで、膳を引っくり返したり、箪笥の引き手をカタカタやったり、倉へ入れられても平気で砂糖をなめたり、小便をしたり、廊下の柱にくくりつけられると足で庭木を折ったりするので、母と相談して学校の先生に訴えた。
放課後私は残されて職員室に呼ばれた。羽場という校長さんが、
「あなたは学校ではおとなしいが、家では言うことを聞かないそうだな」
私は胸を衝かれた。私は組長を止めさせられ、品行が乙になった。私はそれから家でやんちゃをしなくはなったが、たしかに父母を恨んだ。刑罰というものはどうしても精神的なものではない。良心に反省を与えるものではない。恐怖と恨みとを与えるものだ。私はそれから四年に再び組長に任ぜられ、品行が甲になる迄幼な心にどれだけ苦心したか知れない。果して名誉をとり返せるだろうかという心配、先生への不面目、裏を知られたという羞恥、キズ物になったような心持ち、九つや十の子供の心にハッキリと暗い、そしていくらか世俗的な恢復慾を起こさせたことは、どうしても父としては首尾一貫していない気がする。