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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
Read 光り合ういのち (ひかりあういのち) by 倉田 百三 (くらたひゃくぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,439 characters · 263 screens
そしてそれは漢文的素養から来るのだと思った。
私の家には美しい姉たちが小説本を沢山持っていて、私は大てい読み漁っていた。そして父は浄瑠璃を語り、三味線の音がし、店頭には色鮮かな丹物の切れがひるがえっていた。
受持ちの田辺先生にたのまれて「己が罪」を家から持ち出して、宿直へ持って行ったことがあった。
扉の美しい女学生「たまき」の絵姿をめくると、田辺先生は冒頭を一寸読んだ。
「あら、よくってよ。私知らないわ。先生にいいつけてあげるわ」
田辺先生は面を赧らめた。側に三、四人同僚の先生がおられたが、皆気まり悪そうな、しかし好奇的な表情をした。私の作文は評判だったが、そうしたわけでいわば歎文であった。ところで石畑君の作文と言えば、
「鶴は天を舞い、亀は地を躍る」
と言った調子だった。私は私の勉強にどこかしんの抜けてるような不安な感じがした。私が義兄にねだって日本外史を習い初めたのはそのためであった。私は毎日学校から帰ると、それを習うのが楽しみだった。それは父からは得られない別の教養の流れであった。日本の子供には漢文的な雰囲気を注ぎ込んで置くことは、日本人としての骨組みをつくるのに確かに必要なことである。