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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
Read 凡人伝 (ぼんじんでん) by 佐々木 邦 (ささきくに) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 98,944 characters · 202 screens
尤も同級生は大抵農家の子だ。学業も行儀も到底私の比でない。
「お母さん、この頃は先生が褒めてくれない」
と鼻を鳴らしても、又直ぐに、
「お母さん、今日は先生が河原さんは豪いと仰有いました」
と報告する日が来る。褒められる機会があれば決して逸さない。
「これは何ういうことでしょうか? 分る人は手を挙げて」
と先生が見廻す場合、
「先生!」
と私は真先に手を挙げて振り廻す。
「誰かこゝへ出て、この唱歌を一人で歌って御覧なさい」
「先生!」
「河原さん」
と先生は私を指してくれる。
「風車あ、風ぜのう、まあにまあに繞るなりいやあまず繞るも、やあまず繞るうもう……」
と私は顔中を口にして歌う。何うも大変な奴だと皆は思っていたに相違ない。
「誰かこゝへ出てメメンワンワラを黒板に書いて御覧なさい」
「先生!」
「白墨がなくなったから、誰か教員室へ行って持って来て下さい」
「先生!」
と褒められたくて溜まらない。浅ましい話だが、そこは子供だ。
教室以外にも大に努力した。一日一善というような考えが子供の時にあったのだから、少しは買って貰いたい。学校へ行く途に村社の八幡宮がある。二年生になってから私はその前を通る時、必ず帽子を脱いで敬礼をすることにした。