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しょか(せんきゅうひゃくにじゅうにねん)

初夏(一九二二年)

宮本 百合子

Read 初夏(一九二二年) (しょか(せんきゅうひゃくにじゅうにねん)) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 3,549 characters · 8 screens

Aozora Bunko

ルドン、マチス、クリムトの絵を見る。

実に近代の心、思いが犇々と胸に来る。

哀訴や、敏感や、細胞の憂愁は

全く都会人、文明人の特質で

古代の知らない病であると云うかもしれない。

然し、等しく、此等は人類の心の過程ではありませんか

我々は、彼の素朴と敏感とを並び祖先に持つ我々は

其等を皆、我裡に感じる。

奇怪な深夜の幻想、

訳知らぬ文明のメランコリア。

又、ともに

最古の原始をも愛し、憧れる。

野を愛し、部族の生活を思い出し

単純に、純朴にと

一方の心は流れ囁く。

而も、一方は無限の視覚、聴覚、味覚を以て

細かく 細かく、鋭く 鋭くと

生存を分解する、又組立てる。

考 (一)

若し日本人に

ヨーロッパ人のような哲学

神の意識がないなら

生粋ないままでよいと思う。

只、人類の真髄に触れる心力さえあれば

精神の深奥の殿堂に詣れる霊魂さえあれば。

然し、考えなければならないのは

若し、左様に精神が強ければ

きっと、独自な宗教や

哲学――等しく人間、宇宙を極めようとする

意欲、探求の現れが生じるのではないかと思う。

近頃、私は、封建時代、明治三四十年代の日本人と

今二十四五歳の日本人との間に

実に明かな差が生じたのを感じ、