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ほうがんさぶろうのしょうたい
判官三郎の正体
野村 胡堂
Read 判官三郎の正体 (ほうがんさぶろうのしょうたい) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,587 characters · 25 screens
尤も、その代り――といっては可笑しいかも知れませんが――英子姫とは許嫁の間柄で、この春は正式に結婚式を挙げるというところまで話が進んで居ります。
「深山君の勉強には敬服するが、少し身体を粗末にし過ぎるよ、君のように頭ばかり発達すると、人類が生理的に滅亡する相だぜ」
「有難う、けれども、僕はどうもあの運動というようなものをやる気にはなれない」
黒津の手厳しい攻撃に対しても、軽く抗弁しながらも、ともすれば長椅子の上へ置いて来た、外国語の本の方に気を取られ相です。
「判官三郎というのは、近頃世の中を騒がして居る巨盗なんだが、この泥棒は不思議に婦人方に人気があるんだ。例えば、英子さんの今の弁護振りの如き、婚約者たる君の耳に、異常に響かなかった筈は無い……」
「マア黒津さん、何んという貴方は……」
「英子さん暫らく黙っていらして下さい、……ところでだネ深山君。判官三郎の人気というのは、その任侠な点にあることは申すまでも無いが、もう一つの重大な原因は、彼は恐ろしい体力の所有者だという点にあるのだよ。誰も判官三郎の顔を見た者は無いが、彼が庇を渡り、軒を伝い、羽目を攀じ、物理学的約束を無視して、縦横無尽に荒し廻る点が、物好きな婦人方の人気に投ずるところなのだ……」