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けんのよんくんし

剣の四君子

吉川 英治

Read 剣の四君子 (けんのよんくんし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,514 characters · 22 screens

Aozora Bunko

大永年間の人で、鹿島神流の中興の祖松本備前守を初めとして、天真正伝神伝流の開祖、飯篠長威斎もすでに遠い古人であるが、常陸の産であると聞いている。近くは、土地の土豪、塚原土佐守卜伝が、そこに住んでいると聞いている。

だが、訪ねて行ってみると、その卜伝も、

「御遊歴中」

とて、留守であった。

戦雲の世には、人も雲のように、諸国を去来していた。武芸者はわけても旅が生活だった。修行は遍歴にあった。

伊勢守秀綱とか、土佐守卜伝とかは、たとえ野に在っても、土地の豪族なので、弟子郎党など四、五十人も召連れて、小姓の拳に鷹をすえさせ、乗更馬など美々しく曳かせて遊歴した。

しかし、笠一つ、剣一腰で、時雨に会っても、乾す着更えさえも持たない武芸者もある。

雑多な時代の流れの中に、甚助も、一つの色だった。誰も怪しみはしなかった。この若冠な小修行者が、父の復讐を念じ、将来の大志を抱いているとは誰も見なかった。

四年経って帰って来た。

母の顔は、同じだった。

すぐ禰宜の山辺守人が来た。家を立つ時と同じように、仏間に坐って、母と守人の前に手をついた。

「御修行は積んだかの」

母が訊ねた。