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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし
十二神貝十郎手柄話
国枝 史郎
Read 十二神貝十郎手柄話 (オチフルイかいじゅうろうてがらばなし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 127,035 characters · 254 screens
しかし間もなくその鏡面へ、仄かに物の形が写った。
(妾が病気になる時刻が来た)
そうお島が思った時に、物の形が鏡へ写り出したのである。ぼんやりと見えていた物の形が、次第にハッキリとなって来た。それは立派な部屋であった。
その部屋に三人の男女がいた。一人は白衣を着た修験者であり、一人は島田に髪を結った、美しい若い小間使いであり、一人は四十を過ごしたらしい、デップリと肥えた男であって、大店の旦那とでも云いたいような、人品と骨柄とを備えていた。
「あッ」とお島は声を上げた。
「妾の……小梅の……寮のお部屋だわ! ……お菊と、叔父様と大日坊とがおられる!」
その時鏡中に変化が起こった。三人の間に机があったが、その上に一個の人形が、大切そうに立てられたのである。
五
事件は過去へ帰らなければならない。
隅田川の畔、小梅の里に、風雅と豪奢とを兼ね備えた、柏屋の寮が立っていた。一人娘のお島というのが、乳母や小間使いに守られて、寂しく清く住んでいた。
父母に逝かれた孤児であった。が、日本橋の店の方は、古い番頭や手代達によって、順調に経営されていた。お島が柏屋の戸主であった。