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じゅうはちじのおんがくよく
十八時の音楽浴
海野 十三
Read 十八時の音楽浴 (じゅうはちじのおんがくよく) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 103,941 characters · 210 screens
紫色の光線がすこしずつうすれて、やがてはじめのように黄色い円窓から、人々の頭上にさわやかなる風のシャワーを浴びせかけた。
音楽浴の終幕だった。
螺旋椅子の上の住民たちは、悪夢から覚めたように天井を仰ぎ、そして隣りをうちながめた。
「うう、音楽浴はすんだぞ」
「さあ、早くおりろ。工場では、繊維の山がおれたちを待ってらあ」
「うむ、昨日の予定違いを、今日のうちに挽回しておかなくちゃ」
住民たちは、はち切れるような元気さをもって、螺旋椅子から飛びおりるのだった。
ペンもバラも、別人のように溌刺としていた博士コハクのあとにしたがって、元気な足どりでアリシア区に還ってきた。
2
アロアア区から電話がかかってきた。
博士コハクは受話機の前に出て釦をおした。鏡面に漣がたったかと思うと、大統領ミルキの髭の中にうずもれた顔が浮きあがった。
「ミルキ閣下。ミルキ国万歳」
と博士コハクは挨拶をした。
「おお博士、すこし内談をしたい」
ミルキは髭をうごかして物をいった。
博士は心得て、うしろを向いてペンとバラの両人に、隣りの工作室に行っているようにと命じた。
二人は、机の上にひろげていた書類を両手にかかえ、逃げるように隣室の扉を押して出ていった。