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じゅうはちじのおんがくよく
十八時の音楽浴
海野 十三
Read 十八時の音楽浴 (じゅうはちじのおんがくよく) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 103,941 characters · 210 screens
世界じゅうの人類は寝ることも食べることも忘れて、渋谷式の受影機の前に並び、この前代未聞の見世物にながめいった。まもなく、待望の火星人が姿を現わすことだろう。
だが意外なことが、次の瞬間に起った。映写中のフィルムがパサリと切断してしまったように、受影機のうえの映像はにわかに掻き消されてしまった。それとともに、音響を伝える電波もとまってしまった。おそらく火星の地表まであと数百キロメートルという近くまで行ったのに、いったいこれはどうしたことか。それは、いまもって、かの宇宙塵と化し終った渋谷博士の行方とともに、解きえない謎である。……
私は寒星きらめく晴夜の天空をあおいで、深いといきをついたことだった。
私にはいまひとつの想像がある。それは火星人が早くもあの「赤鬼号」を見つけて、火星上に落ちぬ先にぶんどってしまったということだ。火星人は地球の人類よりやや劣っているらしいことは地球のほうがロケットを先に飛ばしたことでも判ると思うが、しかし数百キロの高空でロケットをぶんどる力のあるところからみると、おそらく西暦一千九百五十年ごろの人類と同等の知識を持っているようにも思われる。