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じゅうはちじのおんがくよく

十八時の音楽浴

海野 十三

Read 十八時の音楽浴 (じゅうはちじのおんがくよく) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 103,941 characters · 210 screens

Aozora Bunko

総監は、熱心を面にあらわして、博士に迫っていった。博士は、それをきくと、大きくうなずき、

「氷河期の徴候は、もうだいぶ現われはじめている。第一は、このごろの、へんに熱くるしい気温のことだ。冬だというのに、まるで四、五月ごろの気温ではないか。それに近頃、東京地方では、地震が頻発しているが、これもその前徴の一つである」

「気温が高いということは、氷河期とは、ぜんぜん反対の現象のように思いますが、いかがですか。こう暖かければ、なかなか氷河期なぞ来ないだろうと思われます」

「それは素人考えだよ。今に見ていなさい。大きな地震がやってくる。一度や二度ではない。記録にもないほどの大地震が頻発するのだ。それから、火山が活動をはじめるだろう。それも記録破りの大活動をな。それは、もう間もなく起るだろう。そのときは、わしのいった言葉を思い出すがいい」

やがて、頻々と大地震が来る。そして火山が活動をはじめる。――博士は、それがいよいよ氷河期の徴候だというのだった。

総監は、博士の言葉が、いっこう腑におちなかった。彼は、いっしょに連れ立ってきた四人の権威者の方をふりむいた。

ところが、その四人の権威者は、いずれも眉をひそめて、博士には知れないように、かすかに首を左右にふった。