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はんとういっきしょう
半島一奇抄
泉 鏡花
Read 半島一奇抄 (はんとういっきしょう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,324 characters · 27 screens
――御主人。」
「ははあ、はあ……で、それは。」
「いや、そんなに大した事ではありません。実は昨年、ちょうど今頃……もう七八日あとでした。……やっぱりお宅でお世話になって、その帰途がけ、大仁からの電車でしたよ。この月二十日の修善寺の、あの大師講の時ですがね、――お宅の傍の虎渓橋正面の寺の石段の真中へ――夥多い参詣だから、上下の仕切がつきましょう。」
「いかにも。」
「あれを青竹一本で渡したんですが、丈といい、その見事さ、かこみの太さといっちゃあない。――俗に、豆狸は竹の子の根に籠るの、くだ狐は竹筒の中で持運ぶのと言うんですが、燈心で釣をするような、嘘ばっかり。出も、入りも出来るものか、と思っていましたけれども、あの太さなら、犬の子はすぽんと納まる。……修善寺は竹が名物だろうか、そういえば、随分立派なのがすくすくある。路ばたでも竹の子のずらりと明るく行列をした処を見掛けるが、ふんだんらしい、誰も折りそうな様子も見えない。若竹や――何とか云う句で宗匠を驚したと按摩にまで聞かされた――確に竹の楽土だと思いました。ですがね、これはお宅の風呂番が説破しました。何、竹にして売る方がお銭になるから、竹の子は掘らないのだと……少く幻滅を感じましたが。