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くちぶえをふくぶし
口笛を吹く武士
林 不忘
Read 口笛を吹く武士 (くちぶえをふくぶし) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,467 characters · 21 screens
無双連子
一
「ちょっと密談――こっちへ寄ってくれ。」
上野介護衛のために、この吉良の邸へ派遣されて来ている縁辺上杉家の付家老、小林平八郎だ。
呼びにやった同じく上杉家付人、目付役、清水一角が、ぬっとはいってくるのを見上げて、書きものをしていた経机を、膝から抜くようにして、わきへ置いた。
「相当冷えるのう、きょうは。」
「は。何といっても、師走ですからな、もう。」
小林が、手をかざしていた火桶を押しやると、一角は、それを奪うように、抱きこんですわった。
「用というのは、どういう――。」
上杉家から多勢来ている付け人のなかで、この二人は、よく気が合っていた。身分の高下を無視して、こんな、ともだちみたいな口をきいた。
朱引きそとの、本所松阪町にある吉良邸の一室だった。
小林は、しばらく黙っていたが、
「念には、念を――。」
と、いうと、起ち上って、縁の障子や、隣室のさかいの襖を、左右ともからりと開けはなして、うふふと苦笑しながら座にかえった。
庭から、さらっとしたうす陽が、さし込んだ。
一角が、
「だいぶ物ものしいですな。」
重要なことをいう時の、この人の癖で、小林は、にこにこして、