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こじょうのまひる
古城の真昼
野村 胡堂
Read 古城の真昼 (こじょうのまひる) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,644 characters · 28 screens
「彼奴が判官三郎だ、早く早く捕えて」
とわめき立てます。
「わかってる」
冷い一言、花房一郎は自若として動き相もありません。
「彼奴を逃すな、警官達、判官三郎が穴の中に居る」
子爵の声を聞いて、間近に居た十人ばかりの警官、用水堀の上へ集って来ましたが、花房一郎は二人の入った穴を見詰めたまま、何んとも命令を下しません。
暫くは、白日の下に恐ろしい緊張が続きます。
やがて、待ちくたびれた頃、穴の口へスラリと現れたのは、判官三郎の生月駿三ではなくて、玉置光子のみっちゃん唯一人。
「みっちゃん、彼奴はどうした。判官三郎、イヤ生月駿三は?」
あわて臭って筒井が聞くと、娘は黙って首を振って、危い石垣の上を、覚束ない様子で上って来ます。
「此処だよ諸君」
朗らかな声、後を振り向くと、井戸の口から棕梠縄を伝って上ったらしい生月駿三、泥だらけな身体を拭いて、悠々と脱いで置いた上着をつけながら、
「中は磨き上げた様な石室で、金銀珠玉は一杯だ、時価に積って何十万、イヤ何百万円あるかな」
にこやかに話すのを遮って、
「判官三郎動くな」
子爵玉置道高、押えられたまま口惜しそうに身をもがきます。