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こせんのなぞ
古銭の謎
野村 胡堂
Read 古銭の謎 (こせんのなぞ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,885 characters · 26 screens
六
が、向き直って、
「なるほど、これは美しい」
後ろ手に、床の間の一軸を拝見という格好で、何を見るかと思うと、娘の陽子の顔をつくづく眺めます。
窓から入る夕日を受けて、藤色の洋服に照り栄ゆる処女の顔の美しさは、南老人でなくとも見とれる程でした。夢みる眼、霞む眉、象牙を刻んだような鼻に、紅玉石の唇、現代娘の愛くるしさと清々しさが、この娘の顔に溢れて居ります。
「アレ…………」
娘は驚いて逃げ出してしまいました。
「ハッハッハッハ、いや罪は無い、ところで左京氏、私は今晩ここへ御厄介になっても差支あるまいな。なに、長イスか寝台さえあれば結構で、一と晩ゆるゆるとあなたの持って居られる古銭も拝見し、私一流の探偵方針も定め度い……私の宅? それは構わん、こんな事には慣れたもので、一寸電話を拝借すれば充分じゃ」
左京執事の気乗りのしない顔、陽子の父の苦々しい顔、そんなものは、てんでこの老探偵の眼へ入りませんでした。
六
あくる日の正午五分前、時計の針を見つめて居た陽子は、父親へこう申しました。
「お父様、あと五分よ」
「それでは、お前やって見る気か」
「エ、エ」
「あんな変な探偵のいう事が信用出来ると思うのかい」