Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
じごくふうけい
地獄風景
江戸川 乱歩
Read 地獄風景 (じごくふうけい) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 53,774 characters · 108 screens
すき通って見える青黒い粘膜には不気味な血管や神経などが、黒い川の様に縦横に交錯していた。
胃袋の一部が赤くただれた様になって、三尺程の穴があき、そこから体腔の中へ出られる様になっていた。木島刑事はその穴から、胃袋を這い出して行った。
外は広い赤茶けた空洞であった。スグ頭上にギョッとする様な巨大な光源がブラ下っている。浅草の仁王門の大提灯みたいな、ベラ棒に巨大な、真赤にすき通った、鯨の心臓である。赤い心臓からは、老樹の根の様な大動脈、大静脈が、ウネウネと這い出して、遠く百ひろの彼方まで続いていた。そこに、大鯨の大腸小腸が、青黒く、大小無数のおろちの形でもつれ合っているのだ。
「木島さんではありませんか」
どこからか、ラジオの様に主なき声が響いて来た。
ギョッとして振向くと、大提灯の心臓の下に、異様な寄生虫の様に、黒い小さな影が蠢いていた。人間だ。
「誰です、そこにいるのは」
「僕、喜多川ですよ」
黒影が治良右衛門の声で答えた。
「ア、あなたでしたか。今頃どうしてこんなところに?」
刑事は心臓の真下へ歩み寄った。
「少し考えごとがありましてね。この赤い心臓が僕の想像力を刺戟してくれるものですから」