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じごくふうけい
地獄風景
江戸川 乱歩
Read 地獄風景 (じごくふうけい) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 53,774 characters · 108 screens
それから、水着の娘さんが、道化服の老人が、赤マントの闘牛士が、まるで機関銃にでもうたれる様に、パタリパタリと、足を空に向けては、丘の向側に消えて行った。そして瞬く間に十人の的が、地平線から一掃されてしまった。
砲手がいつの間に玉をこめたのか、玉がいつの間に筒口を飛び出したのか、目にも止まらぬ早業であった。
ゴム風船は絶間なく飛び上り、花火は続けざまにうち上げられ、降りしきる五色の雪と、昇る五色のゴム風船とが、空中に入り乱れて戦った。
「ワハハハハハハ、愉快愉快!」
治良右衛門は、子供の様に躍り上って喜びながら、大砲の側を離れて、彼方の群集の方へ走り去った。走り去る彼の右手に、何かしらキラキラ光るものが、銀色の虹の様に輝いていた。
× × × × ×
誰もいなくなった大砲の側に、妙な顔をして突立っている一人の男があった。不気味な泥棒の扮装をした木島刑事だ。
「まるで気違いだ。友達が幾人も殺されて、その血の匂もうせぬのに、この馬鹿騒ぎは、正気の沙汰じゃない」
刑事には、楽園の人々の気持がまるで分らなかった。全然別世界の人類としか思われぬのだ。